秋田食材図鑑

秋田食材図鑑
秋田ふき
ふきは、数少ない日本原産の野菜で、北海道から沖縄まで自生し、野生種を含め「愛知早生ふき」、「秋田ふき」、「水ふき」など200 種以上あるといわれています。
「秋田の国では 雨が降っても カラ傘などいらぬ 手ごろの蕗の葉サラリとさしかけ さっさと出て行がえ」と秋田音頭 に唄われるほどの大きさな蕗が秋田ふき。
葉の直径が1.3m近く、茎の長さは1.5m以上にも成長します。
昔は秋田県内の山に自生していたといわれていますが、今は栽培しているもの以外は、ほとんど姿を見ることができません。
主に、長く太い茎をそのまま砂糖に漬け込んだ「砂糖漬け」などに加工されていましたが、最近は茎の穴に身欠きニシンを詰め込んで煮込むなど、肉厚で歯ごたえのある食感を生かしたさまざまな料理が作られています。
秋田ふき
セリ
日本原産の野菜で、春の七草の一つに数えられています。
最近は1年中店頭に並べられていますが、秋田で最も需要が高まるのは、秋から春にかけて。というのも、秋田の代表的郷土料理「きりたんぽ鍋」には欠かせない重要な食材だからです。
秋田県内の山間部、常にきれいな水の流れる水田で栽培されたセリの茎や葉は濃い緑色、根は白く長いのが特長です。特に湯沢市三関地区は昔からセリの栽培が盛んで「三関セリ」の名前で出荷されています。
秋田の人たちは、セリの茎や葉はもちろんこの白く長い根も大好物。他県の人は「えっ!根まで食べるの?」と驚くようですが、まずはご賞味あれ。
葉や茎とはひと味違うほろ苦さ、さくさくした食感は濃厚な比内地鶏のスープにからまり食欲をそそります。
畦道にこんもりと雪が積もった水田の中で、寒さをこらえながらセリを収穫する風景は、冬の秋田の風物詩の一つです。
セリ
とんぶり
超高級食材のキャビアはチョウザメの卵で水産物。
畑で収穫される「とんぶり」は見た目がキャビアに似ていることから、「陸のキャビア」、「畑のキャビア」とも呼ばれています。
ねっとりしたキャビアに比べ、こちらはプチプチした食感と淡白な味が特徴。
昔は利尿効果や疲れ目解消などの薬として利用されていましたが、最近は見た目もユニークな食材として注目され、さまざまな料理に使われています。
このとんぶり、実はほうき草の実。県外でも観賞用などとして栽培されているほうき草ですが、その実を食用として本格的に加工・出荷している地域は全国的にも少なく、秋田県北秋田市比内地区(旧比内町)が生産量日本一。
栽培は比較的楽といわれるほうき草ですが、問題は収穫・脱穀後の皮むきの技術です。
比内地区では昭和50年頃に皮むき機械の開発に成功。加工施設も完成し、以来、全国一の生産量を保ち続けています。
とんぶりとんぶり
干し餅
サクサクした食感の後にほのかな米の甘みが感じられる「干し餅」は、米の国・秋田に伝わる素朴なお菓子です。
作るのは1年で最も寒い1月から2月。
餅をつき、ある程度軟らかさを残す程度に硬くなったところで、短冊型に切り揃えます。それを稲ワラで編み上げ、雪や直射日光が当たらない風通しのよい小屋などの屋内に吊るします。
夜から朝にかけての厳しい寒さが餅をカチンカチンに凍らせ、日中になると暖気が餅の内側にできた小さな氷の粒を溶かします。凍っては溶け、凍っては溶け、餅の中の水分は次第に抜け、春先にはサクサクした食感の干し餅ができ上がります。
昔より寒さの厳しい日が少なくなったため、冷凍庫で凍らせる業者が多くなりましたが、干すのはやはり昔と同じ自然乾燥です。
そのまま食べるのはもちろん、軽くあぶったり、油で揚げたりと食べ方も様々。
軽くて腹持ちもいいので、山行きの携行食としても人気があります。
干し餅干し餅
どじょう
どじょうは昔から滋養強壮の食べ物といわれ、タンパク質、カルシウム、ビタミン類を豊富に含み、夏バテ防止にはまさにうってつけです。
どじょうは水の少ない泥の中でも生き続けることから、生命力の強い魚と思われがちですが、実は少量の農薬や環境の変化に耐えられないデリケートな魚で、環境のバロメーターともいわれています。
用水路のコンクリート化が進み、さらに水田に農薬を大量に使用した結果、全国的にどじょうは激減。代わりに養殖が行なわれるようになりました。
最近、秋田ではできるだけ農薬を使わず、自然環境に配慮した農業を実践する地域が増え、水のきれいな水田や用水路ではどじょうが復活。網などでどじょうを獲る人の姿も見られるようになりました。
県中央部にある専門業者の天然どじょうの取り扱い量は東北屈指で、年間約20トン。
秋田産の天然どじょうは東京方面にも保冷車で出荷されています。
どじょうどじょう
芭蕉菜
庭園などの観賞用として植えられている「芭蕉の木」の葉に似ていることから正式名称は「芭蕉菜」。稲庭うどんのふる里・湯沢市稲庭町一帯では「バショナ」と呼ばれています。8月下旬に種を蒔き、寒さが本格化する11月に収穫します。
同じく漬物に加工することが多い「タカナ」の仲間で、見た目も似ていることから、たまに間違われることもあるようです。「タカナは茎が太くて葉が小さいども、バショナは葉が大きく、茎はタカナより細い。それに茎はタカナより柔らかい」とバショナ好きはそのタカナとの違いを強調します。
葉や茎は固いので、最初はタカナと同じように塩漬けにし、しんなりしたところで塩抜きをして本漬けに入ります。タカナの漬物と同じようにザクザクと切ってそのまま食べたり、細かく刻んで油で炒めたり、炒飯に入れたりと食べ方もさまざまですが、バショナの特徴を生かした食べ方といえば、やはり大きな葉で包んだおにぎりでしょう。美しい緑色の葉は海苔とは違った食感で、ピリッとした辛みがたまりません。
芭蕉菜
秋田米
北は白神山地。東は奥羽山脈、南は鳥海山とそれに続く山並み。秋田県は三方を山地に囲まれており、米代川、雄物川、子吉川の三大河川に降った雨が集まり、雨水は一滴も他県へ逃がさないといわれています。秋田はこの豊富な水と肥沃な堆積土を利用して、昔から米作りが盛んに行なわれてきました。
この「米の国、秋田」を代表するお米が「あきたこまち」です。秋田県の農業試験場が作りだしたこの品種は、美味しい米の代名詞でもある「コシヒカリ」と、病気と寒さに強い「奥羽292号」を交配。母親譲りの美味しさをしっかりと受け継いでいる一方で、風や病気に弱く収穫が安定しないという「コシヒカリ」の弱点を克服・改善しています。炊きあがった「あきたこまち」は透明感、光沢、香りに優れ、粘りが強く弾力性に富んでいます。
秋田米